今、ビクターのハイコンポの顔役は完全にウッドコーンスピーカーシステムが張る形になっていると言っていいでしょう。独特のつややかな表現にファンの多いシステムでもあります。
そのウッドコーンスピーカー、もう15年になるのですね。それを記念したハイコンポが2モデル登場しました。どちらもハイレゾ対応のコンパクトオーディオで、メインユニットは一体型のCDレシーバーとなっています。
今回はビクターのウッドコーンオーディオシステムの新鋭機、EX-HR99とEX-HR55をご紹介します。
優れた素材の「木」
スピーカーやイヤフォンの振動板の素材の特性の一つとして、音速と内部減衰率の比率に着目されることが多くなっています。両方を相対的に捉えて考えられることが多いのですが、音速が速く内部減衰率が高い素材が向いているとされています。
そういった特性を持つ素材は素材固有の音が出にくい、というのが理由のようです。
例えば、金属を使った振動板は音速の方がとても速いので相対的に内部減衰率の方が多少低くても問題にはなりにくい、というカタチです。
ウッドコーンスピーカーで使われる木材はそこそこの音速と高い内部減衰率を実現できる素材で、こちらも固有の音が出にくい素材です。
元々楽器の胴などとして活用され続けてきたのが木材ですし、良い響きを出してくれる素材として実践の中でその良さをみんなが分っている素材でもあります。
ただ実際には、木材のオーディオ的な素性の良さの中には科学的に解明し切れていない部分もありそうな気もしますね。
そういった木材の素性の良さを上手く引き出そうと工夫を重ねているのがビクターのウッドコーンスピーカーです。
振動板に使うための技術の確立と、ハウジング側も今は楽器の胴の音作りの工夫をも取り込んでより良い音作りを目指した製品開発が続けられています。
スペック
EX-HR99とEX-HR55の違いは主にスピーカーユニットの違いです。EX-HR55の方には8.5cm径の振動板を使ったフルレンジスピーカーが採用されています。
これに対し上位機種となるEX-HR99の方は一回り大きな9cmの振動板を使ったものになり、大型の磁気回路を使ったりハウジングの作りを工夫したりするなど、よりこだわりの作りを突き詰めたスピーカーが採用されます。
どちらも中口径のフルレンジユニット1発のスピーカーですから再生周波数帯域的にはそれほど上も下も欲張った製品ではないはずです。
それでもフルレンジにこだわるのは点音源化による空間表現の豊かさと、ウッドコーンシステムの特徴でもある中音域の響きの美しさを求めた結果でしょう。
メインユニットの方は基本両機種とも同じ作りですが、EX-HR99のほうにはサイドウッドなどが追加されます。
メインユニットには2chのアンプ、CDプレイヤー、FMラジオ、USB接続のストレージ内の音楽データを再生する機能、Bluetoothレシーバー機能が集約されています。
アンプは同社ご自慢の高音質デジタルアンプ「DEUS」を搭載。4Ωのスピーカーならば50W+50Wの出力を持ちます。
USBコネクタに接続したストレージに保存したハイレゾ音源の再生が可能で、FLAC、WAV、MP3、WMAなどのフォーマットに対応。PCM形式の最大24bit/192kHzまでのサンプリングレートに対応します。
同社独自の高音質化・アップサンプリング技術のK2 TECHNOLOGYも搭載しています。
Bluetoothは残念ながらハイレゾ級のコーデックは採用されていませんが、AAC、aptXには対応していてスマートフォンなどとリンクしてお手軽にスピーカーならではの音の空間表現が楽しめるようになっています。
個人的に少し残念なのはUSB DAC機能を持っていないところでしょうか。サイズ的にもPCと組み合わせたデスクトップオーディオシステムにぴったりそうなのですが。
今後のビクターの対応を期待したいですね。
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