コンパクトなファイルサイズでハイレゾ本来の音を格納可能なフォーマットとして少しずつ認知度が高まり、実際だんだんと普及も進みつつあるMQAですが、遂にこのフォーマットの音源データをハードウェアでデコード可能なチップが登場します。
エントリーからハイエンドクラスまで幅広いDACの製造・販売を行なうESSがそのジャンルに先鞭を付けました。
メインストリームクラスの製品になると思われる「ES9068Q」と、これから普及が一気に進むと思われるUSB Type-Cコネクタ接続のモバイル機器向けを意識した「ES9281PRO」です。
ES9068Q
まずは比較的低消費電力のオーディオ製品向けとされているDAC「ES9068Q」を見てみましょう。
ターゲットとして見ているのは小型のデスクトップオーディオやポータブルプレイヤー、USB DAC機能搭載のポータブルアンプなどとされています。
ESS独自のDACのアーキテクチャである「SABRE DACアーキテクチャ」を継承していて、ESS製の既存のDACからのアップグレードにも適したチップになっているとのことです。
広いダイナミックレンジと高いS/Nを特徴の一つとしています。
最新のチップらしく非常に幅広い音源フォーマットに対応可能で、PCMは最高32bit/768kHzまで、DSDはDSD 1024までに対応可能です。
最大の特徴はやはりハードウェアによるMQAのデコードを行えるようになったことです。
MQAは独自のやり方でPCM系のハイレゾ音源の膨大なデータを圧縮することが出来ますが、その代わり再生時にきちんとハイレゾ音源としてのクオリティを出すためには、「オーディオ折り紙」と呼ばれる仕組みで圧縮されたデータの展開を行なう必要があります。
この部分をハードウェアで行なってしまうことによりプレイヤーなどの製造が簡単になり、音質面の調整でも楽が出来るようになる可能性があります。
また、プレイヤーに内蔵したCPUなどでソフトウェア的にMQAを展開するよりも消費電力の面で有利になる可能性が高そうです。
こういったチップの登場でMQAの普及に加速がかかることを期待したいところです。
ES9281PRO
ES9281PROのほうは単なるDACというよりもオーディオ関連の各種機能を集約したオーディオSoCと呼んだ方が良さそうな多機能チップです。
DACの他にヘッドフォンアンプ、USBコントローラーなどが統合されていて、その中にはもちろんMQAのハードウェアデコーダー機能も含まれています。
モバイル用途、特に消費電力を抑えたいUSB Type-C接続のヘッドフォン、イヤフォンへの搭載も視野に入れられていて、消費電力の低さが大きな特徴になっています。
ハイレゾ音源のフォーマットへの対応幅はやや狭めになりますが、PCMは32bit/384kHzまで対応可能です。もちろんMQAのデコードも出来ます。
低消費電力ながらヘッドフォンアンプ部はかなりパワフルになっているのも特徴でしょう。
さらにアクティブノイズキャンセリング機能やパラメトリックイコライザー、その他のデジタルフィルター機能も搭載。マイク入力への対応や各種制御用スイッチ対応など、オーディオだけに留まらないかなり広い機能をカバーできるシステムチップとしてまとめられています。
iOS機器も今後はLightningコネクタからUSB Type-Cに移行しそうですし、Androidスマホもイヤフォンジャックを廃止してUSB Type-Cコネクタにさまざまな機能を集約する動きがあります。
そういった潮流を鑑みるとESSのES9281PROはオーディオ系チップの今後の進む方向を示す製品になるかもしれません。
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