しばらく前に香港でのハイエンドオーディオ見本市にて発表され恐らく見る人全ての度肝を抜いたソニーの超弩級デジタルオーディオプレイヤーDMP-Z1ですが、やはり日本国内でも発売が決定しました。
12月8日、95万円での市場投入となります。
合わせてより詳細な仕様も公開されています。
なぜバッテリー駆動か
DMP-Z1の最初の発表時には「持ち運べる」という部分のみが異様に大きく取り上げられてしまった感じで、なぜこのプレイヤーの設計者たちがバッテリー駆動を選んだのか、という点への注目度がちょっと低すぎた気がしました。
理由はオーディオにちょっと詳しいユーザーには至極当然のことで、AC電源から切り離すことで極限までクリーンな電源を実現することにあります。
恐らくは他に一切家電などを接続していない状態でも、AC電源にはオーディオクオリティで見るとある程度ノイズが乗っています。さらに家電やパソコンなどを接続して使用していれば、より電源ラインから来る電気自体にさまざまなノイズが増えた状態になります。
これを取り除きオーディオ回路にキレイな電力を供給するために、オーディオ機器の特に上位の機種では電源回路にものすごく力を入れます。オーディオ回路で消費する電力に余裕を持って対処するのももちろん目的の一つですが、どれだけクリーンな電力を供給出来るかにも非常に大きなコストがかけられています。
本当にこだわるユーザーは外部に電源をクリーンに出来るコンディショナーを用意したりするぐらいですし、オーディオの電源は音質にとても大きな影響を及ぼします。
そのあたりをいっぺんに解決できるのがDMP-Z1が取ったアプローチで、内蔵したバッテリーから電力を取ることでAC電源由来のノイズから完全にフリーになることが出来ます。
ですのでバッテリー駆動が出来ることから来た「持ち運ぶことも出来なくはない」、というフィーチャーはあくまで後付けのオマケ、になると思います。このプレイヤーの場合には。(でもこの製品、キャリングケースも付属するみたいですね)
スペックを改めて
DMP-Z1はソニーの製品ながら同社自慢のデジタルアンプS-Materシリーズを使いません。
DACには旭化成エレクトロニクスの現時点でのハイエンドチップ、AK4497EQを左右独立で2つ使います。ヘッドフォンアンプはアナログ構成になるようで、オペアンプのICにはTIのTPA6120A2が使われています。
製品の外観上のアクセントにもなっている巨大なボリュームはアルプス電気製の4連ボリュームのカスタマイズ品を使用するなど、徹底したこだわりでパーツも選ばれています。
バッテリーはデジタル部、アナログ部など主要構成品ごとに独立したものを持っていて、電源系統自体を分離することで他のパーツとの干渉を徹底的に抑える設計です。
クロックジェネレータのクリスタルには44.1kHzと48kHz系の二つを当然のごとく配していて、発振精度が非常に高くノイズやジッターの少ないクロックの生成を可能にしています。
最近のソニーのオーディオ製品と言えば必ず出てくるのが「高音質はんだ」ですが、DMP-Z1には金まで配合したスペシャル版の高音質はんだが使われています。
とにかく製品の価格に見合う分の徹底した音質へのこだわりの作り込みが行なわれた製品です。
ライン出力はない
DMP-Z1はパソコンに接続してUSB DAC機能を利用することも出来ます。コネクタ形状はUSB Type-Cで、パソコンと接続してここから曲データを流し込むことも出来ます。
Bluetooth接続は送受信が可能で、DMP-Z1がレシーバーとなってスマートフォンなどで再生する音楽をDMP-Z1側でデコードすることが出来ます。
Bluetooth接続時に使える音声コーデックは、送信がSBC、LDAC、aptX、aptX HD、受信はSBC、LDAC、AACに対応します。
有線接続時や内蔵ストレージに記録した音楽データの再生時には非常に多様なフォーマットに対応可能で、メジャーどころのハイレゾ音源フォーマットは網羅するイメージになります。MQAにも対応可能です。
サンプリングレートはPCMが32bit/384kHz、DSDは11.2MHzまでネイティブ対応します。
AIを使って楽曲のジャンルなどを解析する最新のDSEE HXとアナログレコード風の再生を可能にする「バイナルプロセッサー」も搭載して、現時点でのソニーのデジタルオーディオプレイヤーの集大成、的な内容を備える形になっています。
ただ、アナログのライン出力はなく、製品が単体DACではなくあくまでDAPであることを主張するような構成になっているところはちょっと面白いかもしれません。
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