非常にコストパフォーマンスの高いオーディオ製品をリリースし続けるFiiOから、エントリークラスの新ヘッドフォンアンプQ1 MarkIIが登場しました。
売価1万5千円程度とUSB DAC機能内蔵型ではかなりのお手頃価格ながら、今流行のヘッドフォンのバランス接続にも対応する意欲作&高コストパフォーマンス機です。
しばらく品切れ状態が続いていたQ1 MarkIIですが、このたび無事実機が入手出来ましたのでしばらくじっくりと聴き込んでみました。そこで感じたことをレビューをまとめてみます。
スペック
まずは簡単にスペックから。
FiiO Q1 MarkIIは心臓部となるDACに、音質面で定評のある旭化成エレクトロニクス製のAK4452を採用しています。さすがに価格レンジ的にAKMのDACの中ではエントリークラスのものとなりますが、チップが新しい分、対応するハイレゾ音源の範囲も広く音質面でも安心感の高いチップです。
フォーマットとしては32bit/384kHzまでのPCMデータに対応。加えて11.2MHzまでのDSDデータのネイティブ再生にも対応しています。
オペアンプにはTI製のこちらも高品質のものを採用。
またQ1 MarkIIの大きなウリの一つとして新日本無線製のデジタルボリュームを採用し、ボリュームを変えた際に左右のレベルが異なってしまうギャングエラーを抑えることを可能にしています。
バランス接続用のコネクタは2.5mm、4極端子を採用。ヘッドフォン、イヤフォンの感度に合わせてゲインをHighとLowの2段階で切り替えることが可能です。
また、重低音を持ち上げるBass boost機能も搭載します。
内蔵バッテリーは1,800mAhで、デジタル入力時には連続約10時間の駆動が出来ます。アナログ入力ならば約20時間稼働します。
サイズは59mm x 99mm x 12.5mm、重量は101.5gとなっていて、かなりコンパクトな仕上がりです。
付属品はパソコンや充電器と接続するためのマイクロUSB<->USB Type-Aのケーブル、iOS機器と接続するためのマイクロUSB<->Lightningコネクタのケーブル、あとはポータブルプレイヤーやスマートフォンなどとまとめるためのシリコン製のバンド、間に挟んで傷を防止するためのシリコン製の保護パッドがあります。
直接Android系のスマートフォンと接続するためのケーブルが同梱されないことは注意した方がいいかもしれません。
Xperia XZ Premiumと組み合わせて
まずはメインの目的であったスマートフォンとの組み合わせです。手元のXperia XZ Premiumと接続してみました。
付属のUSBケーブルは長さも長くあまり持ち運んで使うには適していません。主にパソコンとの接続や充電用に使うことを考えたものでしょう。
ですので、長さが短いマイクロUSB<->USB Type-Aコネクタのケーブルを購入してType-AコネクタにType-Cへの変換器を噛ますことで接続しています。どれも「USB OTG」または「USBホスト機能」に対応している必要がありますのでご注意ください。
充電専用ケーブルではスマートフォンがUSB DACとして認識してくれません。
あとはXperiaの標準のミュージックアプリでハイレゾ音源を再生するだけでOK。拍子抜けするほど簡単に音が出ました。
ただ、標準アプリではどうもDSD音源がうまく扱えないようでしたので、Google Playからソニー製の「Music Center」もインストールして使っています。
Music Centerで音楽再生を行なうと、スマートフォン側のボリュームをキャンセルしてQ1 MarkII側のボリュームだけが活きる形になります。ですので恐らく音質面ではこちらの方が有利なのではないかと思います。
この部分はMusic Centerの設定で変更することも可能です。デフォルトでは「ソースダイレクト」がONになっていて、スマートフォン側でのイコライザーなどの音質調整がキャンセルされる設定になっています。
DSD再生に関してはデフォルトがPCM変換を有効にする形です。Music Center側でPCMのハイレゾデータに変換しながらの再生になります。
下記のように設定を変えるとDSDデータをそのまま出力することが出来て、Q1 MarkII側のDSDのインジケータも点灯しました。
ソニーのDSD=>PCM変換には音質面で高い定評がありますので、DSDのネイティブ再生に対応しないDACを使ってもDSDらしさを残した再生が出来ると思います。
Windows 10パソコンとの接続で
今のWindows 10にはUSBオーディオクラス2.0対応のドライバーが標準で入っていますので、Q1 MarkIIも接続するだけですぐに音が出ました。
WASAPI排他にも対応しているので、対応する音楽再生ソフトさえあれば簡単にビットパーフェクト再生が行えます。
ただ、DSDファイルのネイティブ再生を行なおうとしたときにちょっと躓きました。
実はWindows 10標準のUSB DACドライバーはWASAPI排他のみに対応していてASIO排他には対応していなかったのです。
パソコンでも音楽の再生にはソニー製のMusic Center for PCを使っているのですが、このソフトでDSDファイルのネイティブ再生が出来るのはASIO排他を使うときだけなのです。
このためFiiOのホームページからQ1 MarkIIのドライバーをダウンロードしてインストールすることで、DSDのネイティブ再生も成功しています。
ちなみに、FiiOの日本語版WebサイトのサポートページからQ1 MarkIIのドライバーのリンクをクリックすると、XMLっぽいエラーメッセージが表示され肝心のドライバーが入手出来ません。(2018年6月現在)
緊急避難として英語圏向けのホームページからドライバーを取ってくることで対処しました。
http://www.fiio.net/en/supports/50
肝心の音は?
音の確認は手元の著者お気に入りのイヤフォン、JVCビクターのHA-FXZ200で試してみました。
このイヤフォンはイヤフォンとしては感度がやや低めで、スマートフォン内蔵のヘッドフォンアンプでは少しパワー不足に感じることがあります。
ですがQ1 MarkIIは十分以上にパワフル。ゲインがLowの設定のままでもボリューム位置1/3~2/5ぐらいの位置で十分な音量が出ます。
Q1 MarkII側の周波数に対する特性はほとんどフラットに聞えます。どこかに盛り上がりがあるような周波数特性ではなさそうです。
イヤフォンが良質なスーパーウーファー内蔵タイプと言うこともあって、ちょっとボリュームを上げると肺を押しつぶすような感覚すらある重低音が迫ってくる感じです。もちろん使っているのはイヤフォンですから錯覚のはずなのですが。
低音がぼやけて広がることなく、スパッと出てスッと消える感じがとても気持ちいいです。
音の空間的な定位に関してはかなり解像力のある表現になっています。そこそこの構成のブラスバンドでもそれぞれのパートのいる場所がよく見えます。色々とうまく条件がはまると、この曲はトランペットが3本かな?といった所まで見えそうな感じです。
ただ、実際にホールで生の演奏を聴くとホールの響きなどと合わせて音はキレイに混じって聞えることが多いと思いますから、逆にちょっとキレイに音が分離しすぎかもしれません。試聴で聴いた楽曲の曲作りにも依存するのかもしれませんが。
ボーカルもキレイに定位して歌い手の口元がふわっと浮いているのが見えそうな聞え方をしますが、肉声にはもっと艶があった方が好みの方もいらっしゃるかもしれませんね。全体的にさらっとしたあっさり目の音の出方になっている気がします。
Bass Boost機能はかなり良質な低音・重低音増強になっている感じです。中高域に影響をほとんど与えることなく、低音が変に膨らむことなく低音・重低音の量感だけが増します。
電車の中など騒音の大きい場所でのリスニングや、低音を利かせた音楽が好きな方にはぴったりの機能と言えそうです。
S/N比も非常に高くて、このプライスタグならば十分に高音質、高コストパフォーマンスと言える出来になっていると思います。
より上の価格帯の機種ならその分、より良い音があると思いますが、スマートフォンからの音質面のステップアップには最適な機種の一つになると思います。
スマートフォンと一緒に持ち歩いても邪魔にならない小ささですし。
USB給電の問題
Xperiaと組み合わせて使ってみてちょっと気になる部分もあります。Xperia側のバッテリーの消費が結構激しいのです。
Music CenterからFLAC形式の音源データの再生を行なった場合、30分ほどで5~6%ぐらいバッテリーを食います。スマートフォンの普通のバッテリーインジケーターの表示で読んでいますのである程度の誤差はあるはずですが、それでも結構な消耗です。
どうもAndroidスマホだと、Q1 MarkII側のバッテリーを使わずにスマホ側から電力を供給しているようなのです。
ちょっと検索してみて見つかった情報から給電をカット出来るとの噂のダイソーの接続ケーブルも使ってみましたが、状況に変わりはありませんでした。
この部分は今のところ対応策がない感じです。
まあ、Q1 MarkIIに給電しながら再生しても8時間は再生が可能なはずではあるのですが、長時間の移動ではほぼ確実にモバイルバッテリーが必要になりそうです。
おまけ。HA-FXZ200良かった
音質のチェックであれこれ組み合わせて音楽を聴いてみていたのですが、改めてHA-FXZ200の良さを確認する形にもなりました。
非常に質の高い低音・重低音。それに負けない中音域の元気の良さ、高音の伸び。それなりに発売から時間のたったイヤフォンですが、今でも十分に魅力のある製品でした。
こちらも空間的な音の定位はかなりの解像力で、その点ではQ1 MarkIIとのマッチングは良かったかもしれません。
十分いい音がすると思っていたエレコムのEHP-CH1000相当のイヤフォンとの音質の差にちょっと驚きました。さすがに元々の価格が2.5倍以上異なる製品だけに、その分の価値はしっかりあることを再確認しました。
まだあるところには在庫があるようで、Amazonでは発売当初の半額以下で売られているようです。予算が出来たらスペアにもう一つキープしておきたくなりました。
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