ポータブルプレイヤーのジャンルはオーディオ機材の中において、異例と言っていいスピードで開発と世代交代が続いています。
かなりの部分をデジタル系が占めるせいか、じっくりと熟成を行なっていくイメージのある他のオーディオ機器とは若干性格が異なる感触があります。
そんなポータブルプレイヤーの中でも、ハイレゾ対応機のミドルレンジ、メインストリーム機の強化の流れが強まっているように思います。
そんな中、ソニーのウォークマンZX300を意識してのことか、Astell&Kerlが同社のラインアップの中ではエントリー機、一般的に見るとメインストリーム機に当たるAK70のバージョンアップを図ってきました。
今回はこの新機種AK70 MKIIを取り上げます。
AK70の音質強化モデル
AK70 MKIIの性格を一言でまとめると、この見出しになります。
AK70でも定評のあった音質面をさらに強化した2代目、と言うことになるでしょう。
ハードウェア的にはDACをデュアル構成にして、チャンネルセパレーション、S/N比の向上を図ってきました。
またアナログ系のアンプなどには、同社のフラッグシップ機の思想を取り入れて音作りの見直しを行なっています。
元々AK70のほうもバランス接続対応機でしたが、AK70 MKIIももちろんそのフィーチャーは継続して採用。端子には従来同様の2.5mmのコネクタを採用しています。
ハイレゾ音源の対応フォーマットは、PCMが24bitk/192kHzまでにネイティブ対応。32bit/384kHzまでの入力が可能で、ダウンコンバートしながら再生できます。
DSD形式は5.6MHzまでに対応しますが、PCMに変換しながらの再生になります。
USB DACとしても利用可能になっていて、その際には24bit/96kHzまでの再生が可能です。
多彩な機能
Astell&Kerlの現行世代のポータブルプレイヤーはなかなかに多機能で、Wi-Fiによるネットワーク接続に対応していてネットワークプレイヤーとして利用できるほか、AK70 MKIIがDLNAサーバになる機能まで搭載されています。
専用のCDトランスポートを接続すると、PCレスでCDのリッピングも出来ます。
内蔵ストレージの64GBに加え、最大256GBまで対応できるマイクロSDカードスロットを搭載し、最大320GBのストレージを扱うことが出来ます。
AKシリーズの多機能っぷりは、新しいウォークマンがプレイヤーとしての機能にほぼ特化してきたのとは真逆の方向性で、メーカーの思想が見えるちょっと面白い状況になっています。
盛り上がりを見せるメインストリーム機
ハイレゾ対応のポータブルプレイヤーでは、メインストリーム機の価格帯はだいたい7万円前後になっています。
エントリー機とはひと味もふた味も違い、むしろハイエンドクラスの機種のエッセンスを取り込んで非常に高い音質が実現されてきています。
もしかしたら一番お買い得感の高いレベルのプレイヤー達かもしれません。
AK70 MKIIは内容といい発売タイミングといい、ソニーのZX300に真っ向から対抗する機種になりそうです。
もちろん開発期間を考えるとタイミングを計っての開発、発売なんてことが出来る訳はないのですが、非常に面白い状況が生まれたと言えるでしょう。
ウォークマンのZX1登場の時点で、ある程度ZX300の姿を予想した上で、開発を始めていたのかもしれませんね。
どのジャンルでもそうですが、やはり競争がないと製品開発は滞り気味になり、ユーザも面白みがなくなります。
健全な競争でより良い製品がユーザーの手元に届き続けることを、これからも期待したいですね。