一般的にハイレゾ音源のデータは非常にサイズが巨大です。
著者の手元にある響け!ユーフォニアムシリーズのサウンドトラックアルバムは、収録時間が2時間以上と長いこともありますが、総データ量は1アルバムあたり5GB近く。1層のDVDにすら収まらないサイズがあります。
CDは収録可能な最大時間の80分まで使い切っても容量は700MB。今までのハイレゾ音源では全くまともな曲の収録が不可能といっていいレベルのものでした。
それが「MQA」形式のハイレゾ音源の登場で流れが変わりそうです。今回、ごく普通のCDのディスクにハイレゾ音源を収録した「MQA-CD」が登場することになりました。
今回はこのMQA-CDを取り上げます。
CDになってもMQAの特徴を引き継ぐ
MQAは独特のデータ収録方式の工夫で、データサイズを大きく抑えつつ、ハイレゾ音源らしい高音質を実現した新しい音源フォーマットです。
e-onkyoなど、ONKYOグループ全体で積極的にプロモーションをかけてきています。
元々MQA自体はイギリスのメリディアン・オーディオが生み出した技術で、対応DACのハイエンド製品などもメリディアン自体がリリースしています。
特徴はメリディアンが「音楽の折り紙」と称するユニークな音源データの圧縮技法で、特にデータ量がかさみがちな、一般的な可聴領域を超える部分の音のデータを大きく圧縮できる部分です。
これにより、場合によってはCDよりも低いビットレートでも高い音質のデータを作ることが出来るようになっています。
また、MQAのデータは、対応していない機器ではCDクオリティでの音の再生が可能になっているところも大きな特徴です。互換性がとても高い音源になっています。
この辺りの特性がそのままMQA-CDにも受け継がれています。
収録されている曲の長さなどもごく普通のCDと同等となっているはずです。
MQAに対応していないCDプレイヤーにかければごく普通のCDとして再生が可能で、対応するDACを接続すればきちんとMQAのデータとして、ハイレゾ音源でのクオリティで再生が可能になる仕組みです。
そのほかのMQAらしさももちろん引き継ぎ
MQAの音源データでは、時間軸方向の音の伝達特性の正確を期す部分にも重きを置いています。
ほとんどの機器などでは、扱う信号の波形が突然大きく変化する箇所では、変動箇所の前後に本来存在しないはずの波形が現れてしまったりします。
画像では目に見えて分かりやすい形で「ニセの輪郭」として画面に見える形になりますので、これを「リンギング」と呼んだりします。一般的には、このリンギングが音の世界でも現れるようになっています。
MQAでは、リンギングが出ることで音の輪郭がぼやけてしまうことを極力抑える方向で色々な作り込みが行なわれます。
こういった工夫がMQA音源の音の良さに現れているとされています。
MQA-CDも収録されているデータはMQA形式そのものですから、もちろんこの特性も受け継ぐことになります。
お店で買えるハイレゾ音源に
今、ハイレゾ音源購入の主な手段は、ネットの音楽配信サービスからのダウンロード販売です。
一部、SACDや音声をハイレゾ収録したBlue-rayディスクなどが購入可能ですが、一般に出回る音源の数と比べるとこれらは圧倒的に数が少なくなっています。
ここにMQA-CDが加わることになるかもしれません。
MQA-CDは従来のCDと同じプレス行程でディスクを作ることが出来るようで、元のデータさえ出来上がってしまえば、あとはCDと同等のコストでディスクの大量生産が可能なのだそうです。
このため対応機器が広がれば、ハイレゾ音源がリアル店舗でCDのように普通に買えるようになる可能性もあるわけです。
まだまだMQA対応機器は少ないため、実際どこまで普及してくれるかまだまだ未知数ですが、ちょっぴり期待もしてみたいユニークな製品が生まれたと言えるでしょう。