すべてのハイレゾ音源のダウンロード販売を行っているサイトでは、MP3やAAC形式などの圧縮音元といわれる形式の音楽データよりも、ハイレゾ音源の方が高い価格で販売が行われています。
moreを例に取ってみると、ハイレゾ音源の曲は一般的なボーカル曲では、1曲432円とか540円といった価格のものが多くなっています。これに対してmoraの圧縮音源であるAAC形式の音楽データデータは、1曲257円程度の価格の曲が多くなっています。
ハイレゾ音源でもアルバム単位で購入すると、CDを買うのと同程度の、1曲1曲をバラバラで購入するよりも割安な価格となっていることが多いですが、それでもやはり圧縮音源よりは高価です。
この値段差の理由はどこにあるのでしょう。
高音質のマスター音源が必要
ハイレゾ音源で表現可能な音質に負けないだけ高音質で録音されたマスター音源がないと、せっかくハイレゾ収録を行う意味がなくなってしまいます。
このため、ハイレゾで提供すると分かっている曲は、あらかじめ十分に高音質で収録する必要があります。そのための質の高い機材と録音の手間が必要になる、というのもハイレゾ音源の価格が上がってしまう理由の一つだと思います。
アナログ時代のマスターテープでも、しっかりと作られたものはハイレゾ音源に負けないだけの音質を持っていますが、それをきちんと伝えきれるようデジタル化するには、慎重な作業が必要になります。
ハイレゾ音源のサイズが巨大であること
今のコンピュータやインターネットの事情を考えると若干弱い理由ですが、ハイレゾ音源のファイルのサイズが巨大になることも理由の一つとして考えられます。
flacというハイレゾ音源のファイルの形式では、音質が全く劣化しない形の圧縮(可逆圧縮)がかかって、元々のサイズの7~9割程度までサイズが小さくなっているのですが、それでも1曲5分程度の音楽データのサイズが軽く数百MBに達します。このデータを保管しておくための場所の確保が必要なことがまず一つ。
もう一つは、ファイルが巨大な分、お客さんがダウンロード販売で購入したあと曲をダウンロードしきるのに時間が余分にかかるようになり、ダウンロード販売サイトの回線の利用率が結果的に高まってしまう、という点も上げられます。
圧縮音源に比べて場合によってはダウンロードにかかる時間が数十倍かかることもあり、その分だけ強力な回線を準備しておく必要が出てきます。
販売戦略上の理由
今はこれが一番の理由かもしれません。圧縮音源やCDよりもいい音が聞けるのだから、CDよりも高い値段をつける、ということです。
今は値段の基準がCDにあるような形になっていますが、これからハイレゾ音源が普及していって、ハイレゾが普通、という状況になってくれば、基準の位置が変わってくるかもしれません。また、ハイレゾという言葉だけから来るプレミアム感みたいなものもなくなっていくと思います。