ハイレゾ音源が良い理由を別の切り口で考えてみる

2017年11月16日

 

ハイレゾ音源の良さを表現する場合によく使われるのが「ダイナミックレンジの広さ」とか、「再生可能な音域の広さ」といった表現です。

ですが今回はちょっと別の切り口でハイレゾ音源がCDよりも優れていると言う説明を行なってみたいと思います。

その切り口はちょっぴりコンピュータ的です。

デジタル音源はすべて「近似値」である

このことを声を大きくして言うメーカーやオーディオ関連メディアはないと思うのですが、CDにしろハイレゾ音源にしろ、デジタル化された音のデータはすべて「近似値」表現です。

元々アナログ量の音楽や音を、デジタル化する際には必ず「誤差」が生じます

今あるデジタル化の手法で音楽に限らず、すべての自然のアナログ量で表される現象を「完全に正確に」表現しきることは出来ません。

この部分が今回のお話の大前提になります。

CDよりもハイレゾ音源のほうが原音にかなり近づきますが、それでも原音そのものには絶対になれません。ここをまず押えておいてください。

デジタル音源のビット数とサンプリング周波数は近似の精度を表すもの

CDでは音をデジタル化するときに、16bit/44.1kHzのサンプリングレートで数値化します。

音の大小方向には65536段階、音の時間軸方向には毎秒44,100回の分解能で音を近似します。

これが24bit/96kHzのハイレゾ音源になると、音の大小方向はCDの256倍の精度で近似可能になります。音の時間軸方向には約2.17倍の精度で近似できます。

ここから言えることは、ハイレゾ音源は元の音の波形をCDよりも何百倍も正しい精度で近似可能な能力がある、ということですね。

音域の広さ云々や、ダイナミックレンジがどうこう、S/N比がどうこうよりも、こちらのほうが理系な考え方が得意な方には分かりやすいのではないかと思います。

コンピュータで一般的な計算を行なう精度は32bit

ここでちょっと音楽から離れてよりデジタルな世界のコンピュータのことを考えてみます。

今、コンピュータの世界で数字を扱うときに、一番一般的な計算の精度は32bitです。より精密な計算が必要な場合には64bitの精度の計算もごく普通に使われます。

Excelのように厳密な数字の計算が必要なアプリでは、もっと誤差の出ない計算方法も使われます。

CDの音源データの16bitの精度というのは、今は「半精度」と呼ばれるレベルの数値で、コンピュータの計算上はちょっと精度が足りなくて使われることはほとんどありません。

実のところCDなどの音のデータは数値的な正確さと言う意味では、そんなレベルのおはなしになってしまうのです。

コンピュータで使う一般的な数値の精度は32bitですが、小数点のある値を扱うときには、数字の有効桁数分には24bit、数字の桁取りに8bitを使う形になります。

このため、数字自体の「有効桁数」という意味では、24bitのハイレゾ音源はやっとコンピュータでの一般的な計算の精度に追いついたぐらい、ということになります。

ただ、現実世界の現象の動きを近似するときにどこまでデータの精度がいるかは、こういったコンピュータの単純な計算精度のお話とは、ちょっと異なる部分もあるでしょう。

実際、16bit「しか」精度のないはずのCDの音でも十分に良い音に聞こえるわけですから。

まとめ的なもの

ハイレゾ音源がなぜ良いか、ということを理解するための切り口の一つとして、「近似精度」のお話を持ち出してみました。

このお話がスムーズに通るようなら、ハイレゾ音源の良さが単に音域が広いこととか、ダイナミックレンジ云々のお話に留まらないことが理解していただけるのではないかと思います。

ただ、このお話、CDやハイレゾ音源を販売する側としては取り上げにくいですよね。「実はCDなどの音は誤差を含むデータでした」、なんて自らの首を絞めてしまいそうですし。

こんな考え方も、CDとハイレゾ音源の違いを理解しにくいときの、別の切り口の一つになればと思います。