最近までハイレゾ音源のサンプリングは、24bit/96kHzや24bit/192kHzまでで、それを超える量子化ビット数を持つ音源は販売されていませんでした。
録音のための機器や、その後ハイレゾで録音した音楽データを処理するためのソフトなども整っていなかったことも理由の一つです。
ここにきてe-onkyoが量子化ビット数が32bitで、特に32bit整数型をうたうハイレゾ音源の取り扱いを開始しました。この「32bit整数型」っていったい何のことでしょう?
面倒だけどコンピュータが数字を扱う仕組みの説明が必要に
この「32bit整数型」ハイレゾ音源は録音の際のサンプリング云々よりも、その後、パソコンなどで音楽データを編集する際のソフトの作りの方がどうやら問題となっているようです。
この説明のためには、ちょっぴり(かなり?)面倒ですが、コンピュータが数字をどう扱っているかの説明が必要になります。
整数と浮動小数点数
コンピュータの内部では数字はやっぱり2進数に変換されて扱われています。
32bit整数というと、2進数32桁を使って表される整数のことです。2の32乗通りの種類の整数を表現することが出来ます。
通常は、プラスとマイナス、それとゼロを扱える形にしますので、マイナス2の31乗(-2,147,483,648)からプラス2の31乗-1(2,147,483,647)の範囲の数字が扱えるようになっています。
ハイレゾ音源ではマイナスは必要ないので符号なしの32bit整数になっているはずで、扱える数字の範囲は、0~4,294,967,296です。
これに対して「浮動小数点」という形の数字の扱いが登場してきます。これは、「1.23456 x 10の5乗」といった表現の仕方をする数字の扱いです。どれだけ大きな数字でも小さな数字になっても、「有効桁数」をある程度保証できる数字の表現の仕方です。
こちらをコンピュータが扱うためには、数字の本体部分を扱うためにいくつかのビットが必要で、10の何乗部分を表すためにもやはりいくつかのビット数が必要になります。
32bitの浮動小数点数は、数字本体部分に24bit、10の何乗部分に8bitが使われる決まりになっています。数字本体部分が有効桁数に使われるデータ量です。
音楽データを扱うソフトの作り
録音した音楽をコンピュータ上で編集するためのソフトが、音楽データをどのような形式で扱っているかが最終的な問題になってきます。
もしソフトが音楽データを32bitの浮動小数点数として扱っていた場合、32bit浮動小数点形式では24bit分しか「有効桁数」はありませんので、せっかく32bitでサンプリングした音楽データも24bit相当のデータに丸められてしまいます。
せっかくより高精度でサンプリングを行なっていても、途中で編集を行なうソフトが32bit浮動小数点型で音楽データを扱うソフトだと、途中で情報量が減ってしまう、と言うことになる訳です。
この部分にまでしっかりと配慮を行き届かせて、途中経過も全て32bitの整数型でデータを扱った音源が、「32bit整数型」と大々的にうたわれるハイレゾ音源と言うことになるようです。
途中で情報量が失われることがありませんので、録音時のクオリティがそのまま伝わる音源になるはずです。
ただ、現在、音楽の収録時にしっかりと32bit整数形式でマスタリングされた音源があるかというと、その部分にはまだ微妙な部分がありそうです。