元も子もない話をしてしまえば、しっかりした録音、音作り(ミキシング)を行っている楽曲であれば、どんなジャンルの曲でもハイレゾ音源で聞く価値があります。ある程度しっかりした再生機器を用いてハイレゾ音源を聞けば、基本的には全ての音楽で音が良くなっていることが分かります。
ただし、ハイレゾの良さが伝わりやすいジャンルは存在します。また、CDの音の特徴などから、場合によってはハイレゾ音源の音の良さが分からない場合もあるかもしれません。
このあたりの内容をもう少し掘り下げてみます。
ハイレゾ音源の音の特徴
ハイレゾ音源では、CDの音やMP3などの音よりも、きめ細かく、1つ1つの音を丁寧に表現できるような情報を持っています。このため、ピアノやアコースティック楽器、人間の肉声などは、なめらかで柔らかく、とても繊細な再生になりやすくなっています。
その分、それぞれの音の「とんがった」ような感触は薄れます。
どちらが本来の音かと言えば、「とんがった」感がない音の方のはずですが、CDの音はどちらかといえばこの「とんがった」感の出やすい音の作りになっていますので、CDの音になれきっている場合には、ハイレゾ音源の音に逆に違和感を感じる可能性があります。
多分、そういう方も「生音」を一度耳にすると、感じ方は一気に変わるだろうと思います。
このようなハイレゾの音の特徴がありますので、再生する装置が弱い場合には、音がただ繊細なだけで細い、弱くて芯のない音に聞こえる可能性はあります。
CDの音の特徴
CDの音は、規格の落としどころがうまいのか、はたまた長く使われてきて、その規格自体を使いこなしきっていることもあるのか、強い音がより引き立つような、それぞれの音の粒立ちが良くなるような傾向の音になっています。このため、音の立ち上がりの早いデジタルな音源などにはとても相性が良いでしょう。
また、そういった音の主張が強くなりやすいCDの音をずっと聞き続けてきた関係で、人間の耳がCDの音が良い、という形に慣らされているケースもあると思われます。
一つ一つの音の主張が強くなりやすいことから、多少再生機器が弱くても、音楽の元の姿が伝わりやすい部分もありそうです。
ハイレゾ音源で聞くのに適した楽曲
ハイレゾ音源の、大音量から小さな音まで、丁寧に拾って収録してくれる特性を考えると、最も適していると言えるのは、大編成のクラシック音楽かもしれません。
また、ハイレゾらしさが伝わりやすいという観点では、著者は歌い手の声が前に出ているボーカル曲や、ピアノソロ曲をおすすめしたいと思います。ボーカル曲では、声に何らかのエフェクトをかけたりせず、しっかりと歌い手の声を通そうとする曲が良いと思います。
ピアノ曲では、ピアノのハンマーが弦を叩いたときの音の出始めが堅くなりすぎず、ピアノ本来の音のニュアンスが表現できると思います。
また、ボーカル曲では、声のリアリティが全く異なってきます。そこで音楽が再生されている、ではなく、目の前で歌い手が歌っているのに近い聞こえ方をします。
ハイレゾ未体験の方も、是非一度どこかで、しっかりしたシステムで再生される音を聞いて欲しいと思います。